1. 部分分数分解の基本#
1.1. 原理#
(有理関数の部分分数分解)
複素数係数の多項式 \(P(z),Q(z)\) があり、それぞれの次数は \(\deg P < \deg Q\) を満たし、\(Q(z)\) は相異なる \(z_0,\dots,z_K\) のもと、
と因数分解できるものとする。ただし、次数 \(N_k\) は正の整数である。
このとき、有理関数 \(P(z)/Q(z)\) について、
Tip
一般に、\(\deg P \geq \deg Q\) の場合も、多項式の除算により、
を満たす多項式 \(q(z),r(z)\) が一意に存在することから、
と表すことにより、Theorem 1.1.1 で扱うことのできる \(r(z)/Q(z)\) の部分分数分解に還元できる。
1.2. 公式#
(Heaviside の方法)
(1.1) における \(a_k^{\langle n \rangle}\) は、
と表される[2]。
注釈
Heaviside の目隠し法 (cover-up method) などとも呼ばれる。
Proof. \(k=h,n=m\) であるときの \(1/(z-z_h)^m\) の係数 \(a_h^{\langle m \rangle}\) を求める。
(1.1) の両辺に \((z-z_h)^{N_h}\) を掛け、さらに \(z=z_h\) における \(N_h-m\) 階微分係数を求めても等式は成り立つ。すなわち、
となる。
(1.2.1) の右辺について、
であるが、この被微分関数は \((z-z_h)^{N_h-m+1}\) を因数に持ち、一般の Leibniz 則 より \(N_h-m\) 階微分によって分子に \(z-z_h\) が因数として残るから、
となる。ゆえに (1.2.1) より、
であるから、
となり、示された。
1.3. 例#
の部分分数分解を Heaviside の方法 を用いて行う。
と部分分数分解でき、係数 \(A,B,C\) は、
と求められる。ゆえに、
となる。
参考文献